【第14回絵本出版賞】審査員5名の総評メッセージ

絵本出版賞審査結果

2025/09/02

第14回絵本出版賞の結果を公表しました。

最終審査に参加した審査員5名(※ 全員ではありません)から審査の感想と応募者へのメッセージが届いたので、こちらで紹介します。

 

〈 最初にお伝えしたいこと 〉

賞はあくまでひとつの基準でしかありません。結果は気にしすぎないでください。

それよりも、「締め切りがあるから仕上げることができた」「フィードバックが励みになった」など、ご自身の進化に目を向けて、この賞を活用してください。

それが、受賞することよりも何よりもいちばんの資産になります。

絵本出版.comの使命は、才能を発掘し、絵本の文化を世界に広げることです。

応募者の方全員に、今回の賞への応募を100%今後の創作活動に生かしていただきたいと、心から願っています。

そのための最初のステップとして、ぜひ審査員からのメッセージをご覧ください。

 

 

みんなの心に響き、読み聞かせしやすい絵本

 

絵本未来創造機構 理事 山野江里依氏(写真中央)

 

半日かけて審査させていただきましたが、どの作品も想いがこもっていて、描かれた方のエネルギーをいただいて、すごくワクワクした気持ちですべてを読ませていただきました。とっても楽しかったです。

審査の際は、2つのポイントで作品を選ばせていただきました。ひとつは、「小さな子供から大人まで、みんなが自分に重なる部分を見つけて共感できたり、みんなの心に響くこと」「読み聞かせしやすいこと」。これは、私が理事を務める絵本未来創造機構の活動にも関連する視点だと思います。

審査員特別賞に選ばせていただいた、さとうゆうなさんの「こころつぼみ」という作品は、自分のなかにあるどんな気持ちも大切にしていく、本当の自分に自信を持って1歩前に踏み出していく、そんな作品なんですね。それが小さなお子さんにも分かりやすいように、動物でたとえて描かれているところがとっても素敵だなと思いました。

ただ、他の絵本も素晴らしくて、最後まですごく迷いました。うわ〜面白い、こんなふうに伝えてあげたらいいよね、と思う絵本がたくさんありました。すべての作品の評価が、私はもうこれ以下はつけられない! というほど高かったんです。

絵本は、自分のなかにある想いを表現するひとつの手段だと思います。手段は、音楽であったり踊りであったり色々あると思うのですが、何にせよ、想いを表現すると言うのはとっても素敵なことだと思います。だから、スキルや才能を考える前に、まずは想いを表現してみる、ということを諦めないでいただきたいです。

結果を受けて落ち込む方もいらっしゃると思いますが、その気持ちも大切にしながら、さらに改善していく、もっと自由に表現してみる、など、次のステップを考えてみてほしいです。自分を表現することを諦めてしまったら、すごくもったいないと思うんです。続けていれば、その想いは絶対に届くはずなので。

最後に。絵本出版賞は、すごく素敵な活動だと思います。ひとつでも光るところがあったらそれを見つけて伸ばしていきたい。そんな姿勢で審査をするコンテストはなかなかないと思います。普通は売れるか売れないかで判断していくと思うので。これがきっかけで伸びていって新人作家としてデビューできるかもしれない。そんな可能性を感じられるこの賞の趣旨が、素晴らしいと思っています。審査員をさせていただけたこと、とっても光栄でした。

そして、審査を通して、みなさんの作品からたくさんのエネルギーをいただきました。本当にありがとうございました!

 

 

絵本に対する情熱を傾けてくれた作品たち

 

スプリングインク株式会社 代表取締役 城村典子

 

回を追うごとにレベルがどんどん上がってきています。

とくに最終審査には、読んでいてさまざまなクリエイティブなアイデアが浮かぶような想像力を刺激する作品が数多く上がってきて、どれも甲乙つけがたく、審査員同士のディスカッションも活発になりました。

作品の傾向としては、人との心のつながりを意識したものがすごく多かったと感じます。どうしたら人と心を通わせるか、つながれるかというテーマです。

また、ご自身の持っている絵本に対する情熱を傾けてくれた作品が多かったのは、この賞らしい傾向だったと思います。

たくさんのご応募、本当にありがとうございました。

 

 

 

結果が出てからがスタート。自分の絵本ワールドを広げるために

 

提携出版社みらいパブリッシング 代表取締役 松崎義行氏

 

絵本を創作する人は、絵本の世界が好きで、敬意を払っていて、自分もその世界に入りたいという気持ちを持っているのではないかと思います。だから、よく売れているものを研究することも大切ですが、自分の好きなものに近づけてオリジナリティを追加することは、必ずしてほしいなと思います。

その観点で見ると、入賞したのは、そのような作品が多いですね。また、今まで世の中にあった絵本とはまったく違う、あまり見たことのないジャンルに挑戦している人もいて、そういう人の絵本は、この賞の趣旨にも合っているので、世に出してあげたいという気持ちが働きました。

クオリティや作品性を高めて応募してくださった人が非常に多くて、どれを選ぶかは苦労しましたが、最終的な決め手は、見せていただいた才能を受けて、その人と協力してどのような新しい絵本の世界を創れるのか、ということでした。編集者や出版社と協力して、これからどれだけよくなるかという可能性です。

応募して結果が出たら作品のプレゼンテーションは終了だ、と思う人もいると思いますが、結果を受けて、その後出版が決まったら、そこから新しいスタートです。次は出版物としての完成を目指し、流通に向けて進んでいくという新たなアクティビティが待っています。自分の絵本ワールドを新しい読者のなかに広げていくために、そのような流れがあることを、ぜひ知っていただきたいです。

 

 

絵本のブックデザイナーとして想像をめぐらせた審査の時間

 

みらいパブリッシング東京本社 デザイナー 堀川さゆり氏

 

まずは、たくさんのご応募、本当にありがとうございました。応募していただいて、たくさんの出会いがあって、この審査にも多くの人たちが関わって、ついに最終審査の日を迎えることができました。

審査では、ストーリーが良かったり、絵が良かったり、本当にさまざまな才能を見せていただきました。私は絵本のブックデザイナーとして毎日絵本を作っているので、こうしたらもっとよくなるんじゃないかな、この本を自分がデザインするとしたらどうするだろう、など、たくさんの想像をめぐらせながら審査させてもらいました。みなさんの作品から、多くのエネルギーをいただきました。

出版するとなったら、また今までとはまったく違う世界がはじまるので、みなさんにもそこで、編集者やデザイナーなど第三者の目を通してどんどん作品が良くなっていくところを体験していただけたらなと思います。お会いできることを楽しみにしています。

  

 

いい本に仕上げ、読み手に届けていくために

 

みらいパブリッシング東京本社 絵本部門 編集長 川口光代氏

 

14回目となる今回も、素敵な作品にたくさん出会うことができました。

人とのつながりや心の動きについての表現が多岐にわたっていたとおもいます。

物語の世界観や展開にオリジナリティを感じる作品が多く、王道というよりインパクトのある、今の時代ならではのイラストレーションも見られました。作家さんそれぞれが大事にされているテーマを感じながら、想像をふくらませるのがとてもたのしかったです。

いい本に仕上げ、読み手に届けていくため、編集者として関わらせていただきたいと思っています。

直接お話しできるのを楽しみにしています。

 

 


以上になります。

今回、受賞した方も、惜しくも受賞を逃した方も、この賞をご自身が進化する機会として利用していただき、資産にしていただけたらと思います。

編集者との出会いやイベントの機会も設けているので、そうした機会も積極的に利用してみてください。

絵本出版賞は、絵本作家になりたいすべての人を応援する存在でありたいと思っています。

第14回絵本出版賞の結果はこちらからご覧ください。