【第12回絵本出版賞】審査員4名の総評コメント

絵本出版賞審査結果

2024/02/10

第12回絵本出版賞の結果を公表しました。

最終審査に参加した審査員4名から審査の感想と応募者へのメッセージが届いたので、こちらで紹介します。

次回の応募のヒントも詰まっているので、今後の表現活動の参考にしていただけたら幸いです。

 

受賞より「自分の進化」がいちばんの資産

スプリングインク株式会社 代表取締役 城村典子氏

これは毎回思うことなのですが、全体的な作品の質が上がってきてると感じます。

今回の大賞と審査員特別賞に選ばれた作品は、絵の力で表現するというレベルが特にずば抜けていました。

部門ごとに見ると、「絵本のストーリー部門」は、文字だけのはずなのに絵があったのではないかと錯覚してしまうほど、審査員が頭のなかではっきりと情景をイメージできるような作品が多かったです。

2022年から新設された「赤ちゃん・学べる絵本部門」も、回を重ねるごとに趣旨が伝わってきて、こちらが出会いたいと思っているような作品の応募が増えてきました。

また、応募作品だけではなく、審査の質も年々上がってきています。

良い作品との出会いを求める編集者たちが審査に参加していて、高いレベルで審査の議論をすることができています。

今回、期待した結果にならなかった方に伝えたいのは、この賞をご自身が進化する機会として利用してほしいということです。

賞はあくまでもひとつの基準でしかないので、結果は気にしすぎないでください。

それよりも、「締め切りがあるから仕上げることができた」「フィードバックが励みになった」など、ご自身の進化に目を向けて、賞を活用してください。それが、受賞することよりも何よりもいちばんの資産になります。

編集者との出会いやイベントの機会も設けているので、そうした機会も積極的に利用していただくといいと思います。

 

困難な時代に、絵本の無限の可能性を信じて

提携出版社みらいパブリッシング 代表取締役 松崎義行氏

日本は生存が困難な時代になってきました。

年明けから震災があり、戦争が世界中で起こってる時代です。ひとりひとりの命や生活を大事にしようという人がいる反面、より多くの相手をやっつけた人が評価される、ということも同時に起こっています。

前回(第11回)の募集では、そうした世の中の空気に影響された作品が多かったような気がしますが、今回(第12回)は、そういうものを軽やかに無視している作品が多いような印象を受けました。

軽やかに無視することも、生きる力だと思います。それは、困難な状況のなかで、なんとか面白いもの、楽しいもの、生きる力となるものを見つけようとする行為です。子どもが自分の遊び場を自分でつくろうとするようなものです。

だから、すごく面白い作品が多かったです。そして、今はそうした作品が世の中に求められているのだと思います。

僕は、絵本の無限の可能性を信じています。絵本は、国境も法律も言葉も、あらゆる境界を越えたところに出現する表現物です。

だからこそ、この賞は、どんな作品でもまずはとりあえず受け入れます。

次回、応募をしていただく際は、遠慮せず、思いっきり好きに表現してください。才能を見つけ出すのが我々の使命なので、やりたいことを思いっきりやっていただいて大丈夫です。

一緒に絵本の世界を広げていきましょう。

 

審査は、贅沢な迷いの時間

みらいパブリッシング東京本社 編集長(文芸・アート部門) 谷郁雄氏

回を追うごとに、応募作品のレベルが上がってきていると感じます。

審査の過程でも、良い作品が多いため、どれを選ぶか、贅沢な迷いの時間が増えてきているように思います。

子育てをしている編集者たちも審査に参加しているので、子どもを持つ母親の視点から、それぞれの作品の良さを評価できるのは、この出版賞のいい点だと思います。

受賞作の中から、多くの人に愛される絵本が1冊でも多く世に出ることを願います。

今回受賞を逃した方々も、またチャンスはあるので、諦めずに再度チャレンジしてほしいと思います。

「絵本とはこんなもの」という既成概念をぶっ壊すくらいの、破壊力と想像力のある作品の登場を、僕は楽しみにしています。

 

応募のエネルギーを、次のステップの勢いへ

みらいパブリッシング大阪本社 副編集長 東野敦子氏

今回、構成からしっかりした作品が多く、全体のレベルがさらに上がったと感じます。

気になったのは、いいことを言おう、という意識が強く、それを言葉で説明しようとする作品が多かったということです。

絵本は自己啓発書ではないので、伝えたいことを説明するのではなく、物語のなかで表現してほしいと思います。そうすれば、読む人がよりキュンとする作品になると思います。

また、今回応募された方には、ぜひ作品の講評を聞く機会を利用してほしいと思います。

クリエイティブは、最初は作者1人の世界だと思うのですが、そこに第三者視点を入れることで、より自分の世界が広がり、思ってもみなかった選択肢が増えていきます。

応募したエネルギーをそのまま無駄にしないためにも、次のステップへの勢いとして使ってもらえたらと思います。

お話しできるのを楽しみにしています。


以上になります。

審査員のメッセージのなかにもありましたが、賞はあくまでもひとつの基準でしかありません。

今回、受賞した方も、惜しくも受賞を逃した方も、この賞をご自身が進化する機会として利用していただき、資産にしていただけたらと思います。

編集者との出会いやイベントの機会も設けているので、そうした機会も積極的に利用してみてください。

絵本出版賞は、あなたの次なる挑戦を、全力で受け止めます!

第12回絵本出版賞の結果はこちらからご覧ください。