【絵本出版賞から生まれた名作絵本 】 ビビッドな色づかいと表情豊かな絵、想像力を掻き立てる物語。絵本の王道を行く『パンになりたい』

絵本コラム

2022/10/14

こんにちは!ライター・編集の市岡です。

「絵本出版賞から生まれた名作絵本」についてご紹介する本連載。今回がいよいよ最終回です。

最後に取り上げるのは、当社のスタッフのアンケートでも最も人気だった『パンになりたい』。

一体どんな絵本なのでしょうか?

パンになりたい』 著者:まるやまなお

価格 1375円(税込)
B5判 上製本 32ページ オールカラー
2019/11/14 ISBN978-4-434-26565-5

まるやまさんは、第2回絵本出版賞で大賞を受賞された方です。

ほかにも、第15回タリーズ ピクチャーブックアワード特別賞、有田川町絵本コンクール2018 優秀賞、第20回「創作童話・絵本・デジタル絵本コンテスト」創作絵本部門全国子ども会連合会会長賞など、絵本に関連する数々のコンクールで受賞しています。

そんなまるやまさんの絵本『パンになりたい』は、主人公であるうさぎの「ピポ」が、パンを愛しすぎるあまり「パンになろう」と創意工夫を重ねるお話。

手を替え品を替え、パンになるべく奮闘するピポの姿に思わず笑ってしまいます。

いろいろと試してみるものの、「ピポ」は誰にも買ってもらえません。

見かねたパンやさんが、「いっしょにパンをつくらないかい?」と提案。ピポはパンをつくりはじめます。

しかし、この後につづく最後の展開がとてもシュール。

「あら!ピポ、まだパンになる夢を諦めてなかったのね!」と思わず突っ込みたくなります。

どんな結末を迎えたのかは、ぜひ絵本で確認してみてください!

『パンになりたい』は、まさに絵本の王道作品と言えるかもしれません。

子どもの目を引くビビッドな色づかい。分かりやすくも、主人公の表情がくるくると変わり、思わず感情移入したくなる絵。そして、子どもの想像力を刺激する物語。

しろパンやサンドイッチなど、うさぎの白い体を活かしたピポの発想力には、子どもたちも「どうやったらピポをパンにしてあげられるだろう?」と思わず考えてしまうに違いありません。

また、主人公の名前が覚えやすいのもポイントです。我が家の4歳の娘は、『パンになりたい』を1度読んだだけで「ピポ」の名前を覚え、この絵本を読むときは「ピポのやつ読んで~」と私の元に持ってきます。

絵本出版賞の締め切りまで、残りわずかとなりました。応募用の制作に追い込みをかけているという方も多いのではないでしょうか。

今回、「絵本出版賞から生まれた名作絵本」をテーマに、4冊の絵本を紹介してきました。

それぞれ違った良さや特徴がありましたが、最も大切なのは「ご自身が伝えたいテーマや世界観」と「ご自身の作風」だと思います。

応募するにあたっては、ぜひ改めて「絵本を通じて子どもたちに伝えたいこと」をしっかりとした輪郭を持って心の中に描き、「自分の良さ」を作品の中に表現できるよう工夫してみてくださいね。

最後になりましたが、みなさまのご健闘をお祈りしております。

いつかみなさまと、絵本づくりの現場でお会いできることを願って。

今日までお読みいただき、ありがとうございました!

(文:ライター 市岡光子)

市岡光子 / ライター

千葉県出身。大学を卒業後、都内の中堅大学、小さなPR会社、ベンチャー企業で広報PRの仕事を中心に経験。30歳になる節目の今年、やっぱり子どもの頃から好きだった「書く」を仕事にしていきたいと思い、ライター活動を開始。趣味は読書、音楽、娘と遊ぶこと。

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