【えほんのがっこう奮闘記】テーマの傘をさすの巻

創作のヒント

2022/09/29

こんにちは。案の定、今年の夏も日焼けしました、ゆのきです。

先月はお休みをいただき、飼い犬と一緒にSAPをしてきました。ドッグランにはたまに行くのですが、湖に連れて行くのは初めてで、普段、風呂場で逃げまくっている犬たちが自ら水に飛び込んで泳ぎ始めたり、人間が転倒しているにも関わらず、バランスを保っている姿にはとても驚かされました。子どもの成長を感じる親はこんな気持ちなのかなと考えさせられる体験でした。笑

そんなこんなで、9月も絵本教室に参加してきました。

絵本作家を目指す人たちが集う「えほんのがっこう」。
毎月第3水曜日の19:00から約2時間オンラインで行われている講座です。

7月の「絵本を読みとく」に引き続き今回も、作者の戦略をじっくり観察してきました。

読みとく5つのポイント

作家として活動していく上では、読者としてだけでなく、もうひとつ深い段階で作品を見ていくことが大切になってきます。

今回の講義では、7月の講義でも扱った「ねこちゃん どうしたの?」の分析を通して、絵本を読みとくための5つの切り口を学びました。(絵本の内容を知らない方は、7月の奮闘記をぜひ読んでみてください!)

〈 本を読みとく5つの切り口 〉

① テーマ:ねこと人の繋がり
② キーワード:どうしたの?
③ 登場人物:ののか、ねこちゃん
④ 話の大きな特徴:謎をとく、?の繰り返し
⑤ 表現の特徴:ののかの視点で描かれている、信頼関係

このように5つの切り口で見ていくと、簡潔にまとめることで、作者の工夫を知って良いものをつくる方程式のようなものを見つけやすくなります。

例えば、ねこちゃんには名前がなく、「ののか」にだけ名前があるのは、「ののか」が主人公だからです。

また、ののかの髪型や道路に石で絵を描く姿には、温かみのある雰囲気や時代を絵で伝えるという作者の意図を読みとくことができます。

興味のないものから、学ぶことは難しい。でも、好きなものからは、多くを学ぶことができる。私は、そう考えています。

例えば、数多くの化粧品の中から同じ物をリピートして買ったり、ニュースを見るにもこの番組しか見ないなど、日常生活で私たちは、さまざまな決断をしています。

何か物事を決めるとき、そこには理由が必ず存在するはずです。

自分が良いなと思う作品がどうできているのか、読みとくことが自分の作品に変化をもたらすかも知れません。

キーワードは「絞る」

今までの講義で、テーマを明確にすることが大事だと何度も聞いてきました。

では、ひとつの作品に対し、テーマをいくつも詰めて良いものなのでしょうか?

先生は、テーマを傘に例えてくれました。

傘の取手となる部分が大きなテーマとなり、四方八方から小さなテーマが骨組みとなって、大きなテーマに向かっている。

取っ手がふたつあると、傘は差せない。つまり、作品の軸となるテーマはひとつにして、そのテーマを伝えるために、小さなテーマを見開きごとに掲げていくことが大切なのです。

確かに、大きなテーマがふたつあると、全体で見たときにまとまりがなかったり、読みづらい・つまらないものになってしまいます。

そのためにも「誰に」「何を」「どうやって」伝えたいのか、しっかり考えるのが大事なのですね。

さらに、文の配置や構図の確認のために、絵コンテを使用するのも良い方法だそうです。

絵を描くのが好きだけれど苦手意識がある私は、絵の見せ方を工夫するために絵コンテを使用しています。

絵コンテを使用すると、同じ構図の箇所が一目瞭然にわかるので、全体にメリハリをつけるのにも最適です。

講義の中では、好きな絵本を読みとく際に、絵コンテを使用してみるのも面白いと仰っていました。

自分以外がつくった作品は読む・見るものだという考え方しかなかったので、トレースするというのはすごく新しい視点だなと感じました。

過去につくった絵本の絵コンテ

また、子どもと接する機会がないため、子どもの気持ちがわからないという悩みを持つ生徒さんが多くいらっしゃいました。

私もそうなのですが、周りに子どもがいない人は、どうしても引っかかるポイントだと思います。

その悩みに対し先生は、子どもの頃の自分を喜ばせる気持ちで作品をつくれば良いと仰っていました。

誰しも子どもだった頃がある。ターゲットは年齢だけではなく、学校に行けない子どもたちであったり、人の輪にうまく入れない子どもだっていい。あるいは、特定のあの子でもいい。誰かを喜ばせる気持ちでつくるのが大切なようです。

以前の講義で、誰に向けた作品なのかがわからなくなるという生徒さんの悩みに対して、「自分に向けた作品にすればいい。自分と同じ考えを持つ人は必ずいる」というお話がありました。

今回のターゲットについてのお話は、それと繋がる部分があるように感じました。

追い込まれることで生まれる作品がある

今回は、タイトルに「くち」を入れて、制限時間内に作品をつくるというワークショップを行いました。

今までのワークショップでも、ターゲットを決めて作品をつくっていたのですが、今回は中心となる読者層(コアターゲット)を決めた上で、さらにターゲット以外も無視しないというターゲットを広げる練習と、自分の大切にしている大きなテーマと絡めて、見開き全てにひとつひとつ小さなテーマを掲げるというテーマの傘を作る練習が含まれたワークショップでした。

私は「口から出るしっぽ」というタイトルで「口は災いの元」「話に尾ひれがつく」をキーワードに作品をつくったのですが、またまた時間が足りませんでした。笑 

他の生徒さん達の作品では、口をキャラクターにしていたり、人と動物の口の違いについてのお話や、悩みを抱える人の出口として使用していたりして、同じ口でもこんなに視点が変わってくるのかと驚かされました。

「これにしよう!」と思いつくのは早いのに、そこから見開きを何個もつくるとなると、どの場面を見せようか、物語の展開はどこにしようかで時間がかかってしまうのが私の難点です。今度、生徒の皆さんに、時間配分について聞いてみようと思います。

「テーマとターゲットがはっきりしていると、作りたいものが明確になる」と先生は仰っていました。

本当にその通りで、今までは自分の作品を理解できそうな年齢だとか、3〜5才くらいだとか、ターゲットがあやふやだったのですが、今回限られたテーマに、コアターゲットを設定したことによって、さらにメッセージ性が強くなり、話の展開を短時間で考えることができました。創作活動において、また一歩成長できた気がします。

いかがでしたか?

興味のある方はぜひ一度「えほんのがっこう」に参加してみてください!
初回は無料で体験入学ができるそうですよ。

▼体験入学はこちらから
https://community.camp-fire.jp/projects/460379/activities/341933

来月も、引き続き授業風景をお届けします。
お楽しみに。

ゆのき うりこ / ライター

兵庫県出身。大学を卒業後、「書く」ことを仕事にしたいと思い、24歳でライター活動を始める。趣味は韓国語の勉強・音楽・お笑い・映画・絵を描くことで、オリジナル絵本の作成も行っている。Instagram