新年のカウントダウンは絵本で! 『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』受賞まで30年かかった創作秘話を北島多江子さんに聞きました

受賞者インタビュー

2021/12/27

 

 

 

大みそかに、おばけたちがカウントダウンに向けて時間のとり合いっこをするという、新しい発想の絵本『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』。
 
著者である北島多江子さんにインタビューしました。

 

「絵本出版賞で最優秀賞を受賞するまでは落選続きの人生で受賞までに30年かかった」語る北島さん。

そんな北島さんは絵本出版賞の受賞でどのように変化したのか?
 
絵本出版を目指している方にぜひ読んでいただきたいインタビューです。
 

 

  

『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』あらすじ
 
大みそかの夜、おばけたちは時間のとり合いで大騒ぎ。

一番人気の「1」の時間をゲットできるおばけは誰なのか?
子どもたちと一緒に楽しめる参加型の絵本です。

 

   

 

 

――絵本出版賞を受賞したときは、どのような気持ちでしたか?
 

学生時代から、落選続きの人生だったので、今回もダメだったんだ、とひどく落ち込みました。

しかし、結果通知に自分の名前と作品タイトルがあって。

その瞬間、カウントダウンの時計のようにカチッ、カチッと音が聞こえて、「出版という人生をスタートできるんだ」と思い、夢は本当に叶うんだと感動しました。

応募作は窓口が閉まる10分前まで何度も推敲を重ねて、運転のときを除いて常にこの作品のことを考えていたといっても過言でないくらい、本作に向き合っていました。

審査員の方にも、その熱意が届いていたみたいでうれしかったですね。
 

 

 

――過去、制作したお話と『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』の違いは何だったと思いますか?


今までの作品は、自分の書きたいものを制作していたと思います。
 
でも、『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』は、読者である子どもたちの表情や反応を想像しながら、作成しました。

私は絵本の読み聞かせの講師やボランティアを長年しているのですが、子どもたちがワクワクしてくれるか、登場人物たちのやりとりを理解できるかなどイメージしながら書くようにしました。 
 
読者のことを意識するようになったから、受賞できる作品に変わったのだと思います。
 

 

――作品のなかでも、こだわった点はありますか?


モノトーンの背景は、登場人物の表情がより伝わるように編集者の方が提案して下さいました。

もともとはパステルのふんわり優しい色合いの背景だったので、最初は少し戸惑ってしまったのですが、モノトーンは想像する楽しみが膨らみますし、絵本の色が多すぎるとストレスを感じてしまうというお子さんが繰り返し読んでいますと喜びのご感想をいただき、大変感激しました。

画材も色々試しましたし、本のサイズにもこだわっています。

当初はB5サイズの長方形の予定でしたが、長方形だと文字盤を描くと上部に余白ができてしまうことや、小さなお子さんの目線より少し上にタイトルがきてしまうことなどから、15㎝四方の正方形に変えてもらいました。

すでに原画は完成していたものの、デザイナーさんが修正してくださって。

必要なものは原画も手直しをして、試行錯誤して制作しました。

表紙の手ざわりもよくて、「こんなになめらかな表紙はなかなかない」とよく褒められます(笑)。
 

 

 

 

――イラストの作成にも挑戦されたのですよね?
 
はい。
ストーリー部門で応募したのですが、ずっと文と絵の両方を描きたいと思っていました。

パステル和(NAGOMI)アートのインストラクターとして活動して15年目になるのですが、それも、絵本の絵が描けるようになりたいと思ったのが
 最初のきっかけです。


応募作は文章だけでしたが、賞状授与のときに作品をイメージした原画ラフをお渡しして、「絵も描かせていただけないでしょうか?」と提案させていただきました。

OKは出たものの、制作過程に入ると、「絵が説明的」「登場人物の個性や情景を描いてほしい」などの指摘をいただき、イラストについても改めて学び直すこととなりました。
 

 


個性的なおばけたちのビジュアルとキャラクター設定

 


試行錯誤しながら、物語に合う画風をさがしていきました

 

 

――実際に、出版してみていかがでしたか?


書店などでの読み聞かせ会でも、子どもたちと一緒にじゃんけんをしたり、カウントダウンのときは拍手がわき起こったりするなど、親子で楽しんでくださってとてもうれしかったです。

私はいま、未来学校の社会人講師として、子どもたちに読み聞かせ・受賞までの道程・夢の実現に必要なことなどを伝えているのですが、30年かかっても諦めなかった絵本作家への想いにとても驚かれます。その後の感想のお手紙では、「自分もチャレンジします!」と力強い言葉を書いてくれて、とっても感動しました。

応募作は2019年11月頃に作成したのですが、出版のための手直しは2020年2月からスタートしました。

その頃、新型コロナウイルスの台頭で世の中は大きく変わり始めていました。

2020年は、多くの人が「来年はどうなるのだろう」と不安を抱えながら迎えた大みそかだったと思います。

そのなか、絵本を通じて、一人でもたくさんの人に「明日は良いことがあるかもしれない」と希望を持ってもらえるよう、届くかは分からないものの、思いを込めて制作しました。
 

 

 

 

 

――最後に、受賞をめざす人たちにメッセージをお願いします!


学生時代からの夢だった絵本出版を、私は30年かかってしまいましたが、叶える事ができたのは、作品を見出してくださった方々のお陰です。

私の場合、落選続きでも「子どもたちに自分の絵本を届けたい」という思いが、制作の原動力でした。

皆さんも、もしあきらめたくなったときは、いったん夢をあきらめてしまったときの人生を思い描いてみてください。

そして、あきらめた人生をこのあと何十年も生きていくのはきっと後悔するだろうなと思ったのなら、次の1回にチャレンジして欲しいです! 夢を叶えられるか叶えられないかは、次の1回にチャンレンジするかどうかだと思うのです。

私自身、そうやって自分を奮い立たせ、作品と向き合い続けました。

本の販売後、たくさんの書店さまが著書や色紙、ポップを置いて応援してくださることに、感謝の気持ちでいっぱいです。そして、本と出合う架け橋になれるように、長く愛される作品を届けられるように、これからも努力していきたいと思います。

 

 

 

 

 

《 本について 》

『大みそかに、じかんがじゃんけん大会?』
著者:北島多江子 価格:1430円(税込)
 

 

大みそかのカウントダウンに向けて、時間のおばけたちが動き出した!
一番人気の「1」の数字になれるのはいったい誰?
親子で一緒に楽しめる参加型の絵本です。

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《 北島多江子さん プロフィール 》

こころ絵本作家&朗読家

絵本作家による読み聞かせメソッドの読み聞かせ講座・絵本講座・認定講座を開講。絵本&参加型紙芝居で、【絵本の読み聞かせ会】を定期開催。日本パステルホープアート協会 認定指定校 公認インストラクター。NHK文化センター浜松教室、浜松市生涯学習講師として、公共施設等で『パステル和(NAGOMI)アート』講座を開講。未来授業・講演等、幅広く活動中。静岡県浜松市在住。

2011年 ムーンライト展入選
2020年 第4回絵本出版賞「絵本のストーリー部門」最優秀賞受