【第5回絵本出版賞授賞式】 総評&受賞作品のその後

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2020/08/11

2020年7月11日(土)に、第5回絵本出版賞授賞式が行われました。
ここでは、株式会社みらいパブリッシング/ポエムピース株式会社 代表取締役である松崎義行氏による総評を掲載します。
過去の絵本出版賞から出版された作品なども紹介していますので、ぜひご覧ください!

≪株式会社みらいパブリッシング/ポエムピース株式会社 松崎義行 代表取締役 総評≫

株式会社みらいパブリッシング、ポエムピース株式会社という2つの出版社を経営しています、松崎義行と申します。
まず皆さまの受賞を心よりお祝い申し上げます。おめでとうございます!

  

私も詩集『幸せは搾取されない』(ポエムピース)など10冊以上の本を著者として出版しています。そのたびに、それを世の中に広めるのは大変だな、という気持ちがあります。
しかし出版するたびに新たな発見があり、応援してくださる方も段々増えてきて、それが書き続けたいという気持ちの熱源となっております。
出版社を経営していくなかで、作家の方とお会いし、その方の人生において本というものがどのような位置づけになっていくのか、ということを考え続けています。
同時に、その本が読者や販売してくださる書店にどのような影響を与えるのかも、考えています。

  

著者に強い思い、伝えたい思いがあるということは理解できますが、その作品が書店にて多くの人にとられていく、世間に広まっていくかどうかは、なかなか予想が難しいことであります。
どのように広めていくか、いろいろな作戦がありますし、多くの人の声を聞かないと実現しないこともあります。逆に、聞きすぎてもいけないこともあり、難しさを感じています。

  

当社は絵本出版賞に協力させていただき、たくさんの絵本作品を出版させていただいております。
その1冊1冊が「出版」というひのき舞台に乗るわけで、その緊張感は出版社としても強く抱いています。

  

一昨日、第3回絵本出版賞にて優秀賞を受賞した田中伸介さんの『かっぱのペピーノ』という絵本が手元に届きました。彼は同賞にて審査員特別賞を受賞した『しろ(原作:芥川龍之介)』という作品がすでに出版化されています。
『かっぱのペピーノ』は色を再現するため何回も打ち合わせをし、手書きの文字で表現するなどたくさん話し合い、このたび新作が完成しました。
また第4回絵本出版賞の最優秀賞作品、すみくらともこさんの『わにくんのだめだめきゅうり』も発売されたとたん、図書館などで人気を集め、たくさん注文が来て、書店でも多数販売されました。
本作は応募時は『となりのきゅうり』というタイトルでしたが、「だめだめきゅうり」とよりキャッチーにして、子どもがより喜んで興味を持ってくれるよう、表紙の絵もキュウリをメインに大きく描くなど、いろいろな打ち合わせをへて、このような作品になりました。
作品のなかには当社で発売されている絵本のラインナップが分かるようなチラシを挟み、1冊読んだら、ほかの本にも興味を持ってもらえるよう工夫しています。

  

また第2回絵本出版賞で審査員特別賞を受賞したくさなりさんの『おすしときどきおに』などは出版後により多くの方々に「読んでみたい」と思っていただけるよう、歌や動画を作成し、読み聞かせのイベントなどで使ってもらえるようにしています。
また「FREE使用OK」のマークを作り、非営利目的の朗読・読み聞かせ・SNSへの投稿を無料でできるようにしています(使用前後の報告と本のタイトル、著者名、出版社名の明記は必須)。

  

このような活動を通じて、より本と出会う機会や場所を広げて、書店で購入してもらえるよう、さまざまな作戦を細かく行っています。
『おすしときどきおに』のくさなりさんも、同賞で最優秀賞を受賞した処女作『植物界』に続き、先日3作目である『ねことおばあさん』を出版しました。

  

本作はくさなりさんの絵が好きだという、詩人のティエン・ユアンさんからの依頼で成立したコラボ作品です。最初は届いた表紙のイラストの猫の絵が迫力があり過ぎてちょっと怖かったのですが、もう少し優しそうにできないかと依頼したところ、作者のほうで目の角度などを少し変えていただいたことで、今のような可愛らしい猫となりました。
先日、詩人の谷川俊太郎さんが本作を朗読してくださりました。本作はすでに韓国や中国からも出版のオファーが来ています。

  

海外での出版が決まった作品は本作だけではありません。第3回絵本出版賞にて優秀賞を受賞したあんのくるみさんの『つまさきもじもじ』も韓国からの出版のオファーが来ています。このように受賞作品たちが日本だけでなく、海外へと飛び立っていくケースも増えてきています。

  

1冊1冊に思い出やエピソードが尽きません。
ほかにも、第2回絵本出版賞で優秀賞を受賞した森木森もさんの『女の子になりたい男の子 LGBTって何?』は、大人向けに「LGBTのLとは何か? Gとは何か?」といったことを伝えるために作成した1冊です。LGBTとは何か、絵を通じてより知ることができる、社会的意義のある本だと感じています。本書もよく売れています。

  

ちえみやねん』のまあぼうろさんと尚鈴さんのご夫婦は京都新聞にイラストをずっと投稿し続けていて、当社にも応募がありました。針仕事が得意な発達障害の女の子が主人公なのですが、その子が大活躍するお話です。非常に子どもの目線で、子どもの世界が描かれていると感じました。漫画のような画風ですが、芸術性高く仕上がったと思います。特に地元である京都の書店での売れ行きが好調で、そこから全国にじわじわと広がりを見せています。

   

出版物を広めるには、常に作品の動向などを気にかけておく必要があります。発売日だけ書店に並ぶのではなく、中期・長期的に本が広まり続けるように考えていかなくてはなりません。

  

活動を続けていくポイントとしては、作家の皆さまが自分のファンをどのように形成していくかがあります。

  

第2回絵本出版賞にて大賞を受賞したまるやまなおさんは、関西にお住まいですが、手描きのポップを作成し、数十店舗の書店をあいさつ回りしています。
“〇〇書店様へ”と書かれた手描きのポップがあると、書店側もないがしろにはできません。そのため、ポップは設置される可能性が高まり、そこから返品される可能性が低くなっていきます。本書も関西を中心に売れ始め、徐々に全国へと波及していっています。現在彼女は『なにになるの マカロニさん』、『パンになりたい』、『ブルーノ』に続き、4作目の制作に突入しています。
彼女のように、人気が出て、市場から期待が寄せられた著者は2冊目、3冊目と何冊もの絵本を出版しています。

  

本賞を通じて、多くの作品を出版していますが、ここ最近は書店からの期待もひしひしと感じています。
営業をしていても、以前よりも注文が取れるようになってきました。それも今までにないフレッシュな新人作家を数多く輩出していることから、書店からの注目を浴びるようになってきたのだと思われます。

  

絵本の世界は、皆さんもすでになじみのある、伝統的な作品が売り上げの8割を占めています。残りの2割も、有名作家が定期的に出す新作であることが多いです。そのため、新人が入り込む余地がほとんどないといわれています。
そのようななかで当社はほとんど新人の作家ばかりを輩出している挑戦的な出版社として認識されています。そのため「次はどのような作品を出版するのだろうか」と期待が高まっていると思われます。
その期待を裏切らないよう、1冊1冊を大事に制作していく所存です。

  

当社は応募者の皆さまの伝えたいことや応募の動機を大切にしながら、それを読者の元にいい形で届けるためのルートをいろいろと話し合って、本を制作しています。

  

受賞者の中には「受賞しただけで十分」という方もいらっしゃいますが、当社としては、ぜひ世の中へと開いていくお手伝いをさせていただければと考えております。

  

「絵本を描くのが好き!」という方は大勢いますが、作品を出版して、書店に配本されて、広告を出して、市場に流通させるような知識や経験をお持ちの方はあまりいらっしゃいません。そのような点を補えるのが出版社だと考えています。
出版社は日常的に本を流通させるための作戦を実行しています。そんな出版社の力と、作者の力を合体させて、新たな読者を切り開いていければと思っております。

  

厳しい世の中ですが、応募者の皆さまのバイタリティーはすごいと感じています。その力に触れて、私たちも大きな元気をもらいましたし、ワクワクと心が躍っています。厚い壁もあるかもしれませんが、皆さまからいただいたパワーを原動力に突破していきたいと思います。この出会いをきっかけに、新たな作家と読者がつながれる場所が作れたらと感じています。

  

最後に改めて皆まさにお祝いを申し上げます。
このたびはおめでとうございました!
皆さまとまたお会いできることを楽しみにしております。

  

株式会社みらいパブリッシング/ポエムピース株式会社 代表取締役 松崎義行

  

=総評内の作品紹介=

最後に松崎氏の総評内に出てきた作品をご紹介します。
興味のある方は、ぜひ手にとってみてください!

1.幸せは搾取されない(著:松崎義行)
詩の時間を生きる
『詩の時間』シリーズ創刊!
ギフトとしても最適!
人生に詩を取り入れる、新しい鑑賞法を提案する本のスタイルです
読みやすくて、深い詩の世界を旅してみませんか
価格:1,430円 ポエムピース刊

2.かっぱのペピーノ(著:たなかしんすけ)
かっぱのこどもペピーノが
病気になった父ちゃんを助けるため
まぼろしの魚をさがして大ぼうけん!

価格:1,540円 みらいパブリッシング刊

 

3.しろ≪原作:芥川龍之介≫(著:田中伸介)
見て見ぬフリは「罪悪」か。こころに残る名作『白』の絵本
繊細かつ力強い線画のプロフェッショナル絵本作家「田中伸介」が、
鉛筆ひとつで、芥川の深淵を描きます。

価格:1,650円 みらいパブリッシング刊

4.わにくんのだめだめきゅうり(著:すみくらともこ)
ぶたくんちの きゅうりが
かきねをこえて わにくんの にわへ はいってきました
「こまったな~ ぶたくんにいわなくちゃ」

価格:1,430円 みらいパブリッシング刊

5.おすしときどきおに(著:くさなり)
のれんをくぐれば、そこはぐるぐるまわるおすしやさん。
おすしはどれもおいしそうで、なにをたべようかまよってしまう。
……あじ、いか、しらないさかな、いくらはとばして、たまご、えび、かっぱまき、それから……?!
価格:1,430円 みらいパブリッシング刊

6.植物界(著:草成)
生きるのってしんどいなぁ
あなたも、そんなふうに感じていませんか?
第2回絵本出版賞 最優秀賞受賞

価格:1,980円 ポエムピース刊

7.ねことおばあさん(作:ティエン・ユアン、絵:くさなり)
静かな時の流れのなかで、猫とおばあさんの日常が描かれる。
2人の死後にあった神秘的な物語は、言葉のない世界で語られます。


価格:1,540円 みらいパブリッシング刊

8.つまさきもじもじ(作:あんのくるみ、絵:はやしともみ)
これは、ふしぎなつまさきのおはなしです。
言えなかったきもちはどこへいくのでしょう。
もじもじは勇気をまっているのかもしれません。

価格:1,540円 みらいパブリッシング刊

9.女の子になりたい男の子 LGBTって何?(著:森木森も)
LGBTに対する理解がまだまだ浅いと感じる世の中へ
著者のまっすぐな想いを届ける、注目のデビュー作。
大人も子どもも読んで感じてほしいテーマです。

価格:1,430円 みらいパブリッシング刊

10.ちえみやねん(作:まあぼうろ、絵:尚鈴)
得意のぬいもので、小さな幸せを振りまくちえみとその仲間たちがきっと好きになります。
子どもの目線と感覚でみた不思議で魅力的な世界。
ちょっと奇妙で愉快な仲間たちにぜひ出会ってください!!

価格:1,430円 みらいパブリッシング刊

11.なにになるの マカロニさん(著:まるやまなお)
きょうは たろうくんのおたんじょうび。おともだちも やってきました。
パパは おいしいりょうりをつくろうと ぼうしをかぶって じゅんびばんたんです。だいどころでは たべものたちが なにになれるか ワクワクドキドキ。
マカロニさんは いったいなにになるのかな?
価格:1,320円 みらいパブリッシング刊

12.パンになりたい(著:まるやまなお)
なりたいものに、とにかくチャレンジ!
ピポのがんばる姿がシュールで、思わず笑ってしまうほど可愛い!
子どもと大人がいっしょに楽しめる絵本シリーズです。

価格:1,375円 みらいパブリッシング刊

13.ブルーノ(著:まるやまなお)
まるやまなおの絵本最新作! いぬのブルーノはたろうくんのくつ下が大好き!
たろうくんがあるいていても ハム ハム ハム
タンスにしまっても洗濯物のなかからも ガサ ガサ ゴソ ゴソ
価格:1,540円 みらいパブリッシング刊

上記のほかにも、みらいパブリッシング/ポエムピースではさまざまな絵本を出版しています。詳しくは「みらいパブリッシングの絵本・児童書」、「ポエムピースの本」をご覧ください。

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第6回絵本出版賞の応募受付が始まりました。
上記のように、すでにたくさんの受賞作品が出版化されています。
プロの絵本作家になるのも夢ではありません!
プロ・アマ問わず、どなたでも応募できます。
「自らの作品を出版したい!」という方はぜひ応募フォームよりご応募ください。
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