2019/09/24
第2回絵本出版賞ストーリー部門の受賞作
『アンちゃんとおうち』が本日(2019年9月24日)発売!!!
台風など自然災害のおそろしさ、そしておうちのありがたさを伝えてくれる本作は、作者の実体験をもとに描かれた「おうち」の絵本です。
また見返しには、切り抜いて工作できる展開図とアンちゃんとおうちさんのぬりえもあり、作品を読み終わった後もたのしみがあります。
ストーリー部門受賞作初の出版化ということで、著者の“かくたにたかし”さんに作成から出版に至るまでの製作秘話をうかがいました!
これから絵本のストーリー部門へご応募される方も、ぜひこの記事をご覧になって参考にしてみてくださいね!!
~絵本出版賞 応募のきっかけ~
私がこの絵本を描きたいと思ったのは、2018年某日、日本がある天災に見舞われたときでした。今まで経験したことのないような恐怖に襲われ、その時、家に守られていることを改めて実感し、さらに家への感謝の気持ち、愛着が湧きました。
そしてこの気持ちを絵本で表現して子どもたちにも今まで以上に、家で過ごす時間を大切にしてもらいたいと思うようになったのが執筆の動機です。
現代は夫婦共働きで忙しく家族で過ごす時間も必然的に減ってきています。しかし人間というのは、まず先に家庭が充実し、それによってイキイキと社会活動ができるものだと思い育ってきました。(※家庭環境に恵まれない子は社会で活躍できないということではありません。)そういった想いも重なり、家や家族をテーマにしたものを描きたいと思いました。
また、長きにわたり、貧しい人や病める人、孤児たちのために尽くしてきたマザー・テレサさんは、ノーベル平和賞を受賞されたとき、「世界平和のために私たちはどんなことをしたらいいですか」と記者にたずねられ、「家に帰って、家族を大切にしてあげてください」とおっしゃったと言います。
猟奇的な事件も多く報道される昨今ですが、マザーテレサさんがおっしゃられたように、私たち一人ひとりが家族を大切にすれば、そのような事件も少しでも減るのではないかと思いました。そして、その思いを子どもたちに少しでも伝えることができれば……。そう思ったことも執筆動機の一つです。
大賞のみ絵本化というコンテストは数多くあると思いますが、優秀賞や奨励賞など各部門で絵本化支援をしていただけるコンテストは珍しいと思いましたので、入選すれば出版化のチャンスがいただけると思い、応募しました!!
~入選、そして主催者の城村さんとの面談~
応募当時の私は作画に自信がなかったため、「絵本のストーリー部門」に応募。なんとか奨励賞をいただけましたが、自分の中では何か物足りなさを感じていました。
その後、絵本出版賞主催の城村さんたちと面談をさせてもらえることに。その面談で印象的だった言葉があります。それはまだ絵本としてのストーリー性が弱くいろいろと迷っていた時に城村さんに言われた言葉でした。
――――「今後、編集者さんと打ち合わせをしていく中でいろいろとアドバイスをもらうと思いますが、あなたが最初に描きたいと思ったことを大切にして制作していってください。それがその作家だけにしか描けない個性だから。」
その後、編集さんと打ち合わせを重ねることになりますが、自分の中ではいつもこの言葉を中心に据え制作していて、とても重要な言葉になっています。
~本格的に絵本制作スタート!~
その後、みらいパブリッシング編集長、担当編集さんと絵本制作をスタート。ここでも、またまた衝撃を受けることに。
最初の打ち合わせで編集長に指摘されたことは、自分が何か物足りないと思っていたこと、ズバリそのものでした。ストーリー展開、緩急、オチに至るすべてにおいて府に落ち、初めて絵本制作をする私はこれがプロの仕事かと感動しました。自分に足りなかったパズルのピースを見つけたといった感じでしたね。
それから、担当編集さんと一緒にネーム作りをするようになりましたが、その時も自分の足りていない部分を補っていただきました。私は細かいデザインや設定、演出などが苦手なのですが、編集さんの女性らしい極め細やかなセンスとアイデアで、ファッションや家具、食べ物、おもちゃなどのデザイン性が格段にレベルアップ。主人公の女の子についても、実際にお子様をお持ち担当編集者さんからのアドバイスで、子どもの習性・特長などを教えてもらい、主人公の女の子がどういう動きをするのがベストなのかを探っていきました。毎日が勉強の連続。とても貴重で楽しい時間を過ごさせてもらうことができました。
すべてのアドバイスがプラスに働き、気持ちよく仕事ができています。編集さんにはとても感謝しておりますし、担当になっていただけて本当によかったです。
応募時の作品も別に悪いわけではないのですが、絵本としての魅力として考えると、応募時が「1」で、支援後の作品は「10」くらい。自分で言うのも変な話ですが、それくらい進化させてもらえました。応募時のものとは、もはや別物です(笑)。その大きな違いはやはり、読者のことをどれだけ考えているかだと思います。応募時の作品は少しアートよりと言いますか、自分が描きたいと思ったものを描いていただけですが、支援後は読者目線も意識できるようになりましたので、少しは商業出版に近づけたと感じています。
ちなみに作画に関して言いますと、初めは自信がなくイラストレーターさんに外注しようとしていました。しかし編集長さんとの最初の打ち合わせで、「(出版賞応募時に送付したラフ画を見ていただいて)かくたにさんはポテンシャルが高いから描ける。」とおっしゃっていただき、「よし!やってみよう!」という気持ちになれました。今では拙いながらも納得して描けているので、自分で描いて良かったと思っていますし、背中を押していただいた編集長さんには本当に感謝しております。
~絵本出版賞に応募される方へ~
まずは、自分が描きたいと思った最初の気持ちを大切にして応募してください。初めての方は、起承転結や、ストーリーの構成が少しくらいおかしくても当たり前で、そこは編集さんにサポートしていただけます。でも、テーマといいますか、物語の核、読者に何を伝えたいのか、という部分は作家自身が持っていないと編集さんも困ってしまうので、そこは作家の仕事だと思います!
そして見事、絵本支援化をしていただけることになった方は、主催者さん、編集長、担当編集さんを信頼し、一緒に作っていってください。
そうすれば必ず良い作品、というか自分が想像していたものよりはるかに良い作品になっていきます。自分でも進化していく過程が手に取るようにわかると思います。もちろん作って終わりではないですから、販売に関していえば私もこれから挑戦する立場となります。
みなさんの愛ある素晴らしい作品、子どもたちにとってプラスになるような価値観を、絵本を通じて世の中に発信していきましょう!
【かくたにたかし】
1985年生まれ。岐阜県在住。
デザイン科の高等学校、専門学校を卒業後、広告会社でグラフィックデザイナーとして勤務。
関西エリアを襲った、2018年の台風21号が本書のモデル。
自宅が家族を守ってくれた実体験を元に、人が生きていくうえで基盤となる「家」について今一度考えさせられ、本書を上梓。
TOKYO POST CARD AWARD 2017「ITADAKIMASU」大賞受賞のほか、数々のデザインコンペなどに応募。活躍の場を広げている。
絵本出版賞では、こども向け・大人向けなど、対象を問わず様々なジャンルの作品を募集しています。また、かくたにさんのように、絵本のストーリー部門での応募も可能です!!
また今回(第4回絵本出版賞)から、コミック部門があらたに拡大しています!
詳しくは、「絵本出版賞について」のページをご覧ください。
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