【第2回絵本出版賞 ストーリー部門】審査員コメント

絵本コラム

2019/02/15

 

昨年末、第2回絵本出版賞の最終審査が行われました。

 

最終審査の様子は「第2回絵本出版賞最終審査が行われました!!」にてご覧いただくことができます。

 

ここでは、部門の受賞作ごとの選評をご紹介します。

受賞した方だけでなく、受賞できなかった方や応募していない方もぜひ次の審査通過の参考にしてくださいね。

 

 

~優秀賞~

だいどうほうえ「いつも いつでも いつまでも」

・初めて大切な人の死に立ち会ったとき受け入れられない子どもの心の様子をよく表現できていると思います。

 

・身近な死を丁寧に描いています。素敵な作品ですが、テーマが使い古されている感も。

 

・大切な人が亡くなるお話。子どもの目線でよく書けています。

 

つきじのりえ「ラムネバス」

・完成度が高い作品です。ワクワクしますが、目新しさはないかも。

 

・ラムネバスという発想が面白いです。乗ってみたくなりました。

 

・子どもの感覚がよく生きている作品です。絵にしたとき面白そうだと感じました。

 

小池三千世「ハイヒールおじさんと しあわせのタネ」

・こんなことがあったら素敵! ハイヒールって男子からしてみるとかなり不思議な物だということを思い出しました。

 

・男の人がハイヒールを履いたり、小石を集めたりするのは人によっては変なことなのかもしれない。ハイヒールおじさんとそうくんとの関係性が良いです。

 

・ハイヒールを履いたオジサンが気になりました。2人だけの秘密をもっとクローズアップしてほしいです。

 

苺まんじゅう「こわい気持ちとちょっとの勇気 (一般の子ども達、障がい者の子ども達に向けた作品)」

・時代的にも興味のある分野。発達障がいの子どもたちを育てている親御さんたちへのメッセージ性も感じられます。

 

・荒削りですが、心動かされる作品です。

 

・繊細な作品。怖い気持ちは誰にでもある。よく書けていると思います。

 

ゆうな「おかしの国のうめぼしパーティ」

・お菓子の国に迷い込むという設定が楽しいです。驚異のローティーンの登場!(お菓子のねり梅は「駄菓子堂」の商標のようです)

 

・梅干しパーティーのネーミングが良いです。楽しいお話です。

 

・お菓子の国の梅干しがねり梅になる話。文章をブラッシュアップすればもっと面白くなると思います。

 

~奨励賞~

かくたにたかし「ぼくとおうち」

・新しい家ができ、家族の点描が続く前半から一点、後半、家が主人公!? 発想が楽しく家のデッサンがとても可愛いです。ストーリーがないだけに描き込んで絵で見せられると良いですね。

 

・よくできていますが、いまいち突き抜けている点がありません。ストーリー部門ですが添付の絵も素敵です。

 

・ストーリー部門ですが絵が上手いです。お話もとても好感が持て、家に対して私も感謝の気持ちが湧いてきました。

 

藤松翔太郎「麦(むぎ)のありがとう」

・いいお話です。ストーリーだけで情景がありありと浮かんできます。

 

・説明的すぎる印象。絵とのバランスが大事ですね。素敵なイラストで絵本になって欲しいと思いました。

 

・地味なお話ですがいいストーリーです。イラストをつけて読みたい。いつも当たり前にあるものが実はいろんな人の力に支えられて成長して、誰かの役に立つことに気付かされます。

 

瞳「あねすてやま」

・姥捨て山のパロディ? 文章は個性的でインパクトがありますが、世界観が独特すぎてストーリーや趣旨がわかりにくいところも。

 

・荒削りですが、新しい作品。

 

・わかりにくいですが、童話をモチーフとした教育絵本としてつくっていけばいいと思います。

 

あしぇりー「どーぶつまーち」

・「おもちゃのチャチャチャ」を題材に作っている印象を受けました。世界観はよく、テーマをもっとはっきり持たせると良いと思います。

 

・不思議な魅力のある作品です。

 

・よくあるパターンという印象を受けました。童話文芸絵本としてシリーズにできる期待感はあります。

 

ヒトミマイコ「おべんとちゃんとおはしちゃん」

・心が温かくなるお話。なんでおはしにぼうし?などツッコミどころはありますが、それはそれで面白いです。

 

・おべんとうとおはしである必然性や、ぼうしってなに、かぜってなにと色々ツッコミどころはありますが、なぜか面白いです。

 

・絵が付いたところを見てみたいです。きっとほっこりする絵本になるはず。可愛い話です。

 

悠実「鏡の中の美術館」

・楽曲と共にあるような物語と感じました。

 

・絵本のストーリーというよりも一つの作品。文字だけで読もうとすると少々読みづらく集中力を欠くところがあります。

 

・独特の世界観を感じます。ストーリーが面白いというより詩のような感じ。少し難解な印象。

 

おくり「夢の中で」

・可愛いお話です。夢で将来の自分と出会い、ケーキを作るという発想が素敵です。

 

・夢がありますか、選ぶ理由が見つかりません。最後のケーキはお母さんの手作りではなく、大好きなお店で買ったケーキなのかな?

 

・夢で将来の自分に会えるのは子どもなら楽しそう。可愛い絵をつけてほしいです。

 

タカハシコハク「虹の橋をわたる猫」

・小さな男の子が天国に行くという情景がストーリーだけですがよく描けていると思います。

 

・組み立ては上手ですが、あと一歩抜きん出たところがあると良いです。

 

・泣いてしまいます。可愛い絵をつけて読みたいです。

 

しいば はる「ガジュマルと白い鳥」

・会話はないけれども優しい雰囲気を感じられるいいお話です。

 

・静かなストーリー。“木視点”というのは面白いですが、もう少し何を伝えたいのか明確にすると良いと思います。

 

・静かな話。少し長生きがしますが、キレイな絵が付けば良いと思います。

 

なやなん「ふたつのほし」

・“おばあちゃんの死”は大人でも共感できて、いいストーリーだと思います。絵本よりショートショート向き。

 

・ストーリーとして構成されていませんが、心を打つものがあります。もっと感動的な話になるよう工夫を凝らせるはず。

 

・子どもの気持ちがよく書けているストーリー。お坊さんが気絶してしまうなど現実的でない部分もあるので編集の必要性は感じます。

 

以上、ストーリー部門でした。

ストーリー部門では、文章だけで完結しているのではなく、「思わず絵をつけたくなる」「情景がありありと思い浮かぶ」といった作品が選出されました。

誰もが子ども時代には持っていたワクワクやドキドキ。

そういったものを上手に描き出している作品も評価が高かったです。

また今の時代だからこその新しいテーマに着目している作品たちも審査員の目を引きました。

ストーリー部門のなかには、「これは絵本のストーリーというよりも別の作品(詩やショートショートなど)だよね」と判断されてしまったものも。

そうならないためにも、作品を作るときは「自分だったらどのような絵をつけよう」とページごとに思い浮かべてみるのも良いと思いますよ!

 

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