【第13回絵本出版賞】審査員3名の総評メッセージ

絵本出版賞審査結果

2024/12/02

 

第13回絵本出版賞の結果を公表しました。

最終審査に参加した審査員3名(※ 全員ではありません)から審査の感想と応募者へのメッセージが届いたので、こちらで紹介します。

 

〈 最初にお伝えしたいこと 〉

賞はあくまでひとつの基準でしかありません。結果は気にしすぎないでください。

それよりも、「締め切りがあるから仕上げることができた」「フィードバックが励みになった」など、ご自身の進化に目を向けて、この賞を活用してください。

それが、受賞することよりも何よりもいちばんの資産になります。

絵本出版.comの使命は、才能を発掘し、絵本の文化を世界に広げることです。

応募者の方全員に、今回の賞への応募を100%今後の創作活動に生かしていただきたいと、心から願っています。

そのための最初のステップとして、ぜひ審査員からのメッセージをご覧ください。

 

才能は「個性」。個性を磨けば才能に変わる

スプリングインク株式会社 代表取締役 城村典子氏

今回の審査でいちばん印象的だったのは、時代の影響を受けた作品が多かったということです。

たとえば、絵本のストーリー部門の最優秀賞に選ばれた、さわゆきえさん「家族じゃないのに」という作品は、時代とともに変化する家族の在り方について考えさせられる内容でした。

同部門の煌めきフューチャー賞、小野和也さん「うそつきの嘘」という作品は、情報が溢れみんなが混乱している世の中で、情報をどう伝えるのか? 嘘だからすべてが悪いわけではなく、愛のある嘘もあるかもしれない、といったテーマを感じる物語でした。

大人向け絵本部門のハッピーソアー賞、あいはらゆきさん「17000食のレシピブック」は、世界の貧困、食糧問題、戦争の問題まで反映された作品で、かつ、それが説明的ではなく、ちゃんと物語として昇華されていることが非常に印象的でした。

少子化と言われ続けて久しいですが、子どもたちはこの国の未来です。これからの未来に大きな希望を与えられるような絵本が、この絵本出版賞から生まれていくことを願っています。

「才能がないから応募を躊躇してしまう」「才能がないから受賞しなかった」「私には絵本作家になる才能はない」…と思っている方もいると思いますが、才能というのは「個性」です。個性を、想いとアクションで磨いていくことで、それが社会的な才能へと変わっていくのです。

これでおしまいではなく、作品を創り続ける、応募し続ける、挑戦し続けることが大事です。みなさんの才能は無限大だということを信じてください。

第13回絵本出版賞にご応募いただいた方には、プロの編集者のフィードバックを受ける機会をご案内しているので、ぜひ参加してください。せっかく時間をかけて作品を創り、応募し、それによって得ていただいたチャンスなので、生かさないのはもったいないです。この経験を、完全に自分の資産にし、次のステップへ向かってください。

 

作者1人でも編集者1人でもなく、タッグを組んで一緒に創るのが絵本

提携出版社みらいパブリッシング 代表取締役 松崎義行氏

審査を通して、応募者の方々からの“期待”を感じました。この賞の懐の深さを、どんな作品も両手を上げて歓迎する私たちの意気込みを、すべて知った上で、そこに期待して応募してくださったことが、ひしひしと伝わってきました。

それほどまでに、多様で幅広いジャンルの絵本の応募が集まりました。絵本というのは、本当に裾野が広い、色々なものが存在していい、自由な表現媒体なのだということを改めて感じました。

城村さんが才能の話をしていましたが、僕も才能に出会いたいと思っています。まだ磨かれきってなくてもいいのです。ちょっと光っていれば、僕たちがそれを見つけます。

表現が完成している作品は、ビルに例えると、もう建て直しができません。完成しきっていないほうが、そこから何か一緒に創ることができます。作者1人でも編集者1人でもなく、一緒にタッグを組んで創るのが絵本というものです。そこから思わぬものが出来上がり、みなさんのもとへ届く絵本になっているのだということを、お伝えしておきたいと思いました。

そうした出版の世界、絵本作家の世界に興味がある人は、ぜひ講評会や編集者との面談に参加してみてください。私たちも、応募してくださったみなさまに直接お聴きしたいお話がたくさんあります。お会いできるのを楽しみにしています。

 

ご自身の作品が、だれかの一生忘れられない絵本になる

みらいパブリッシング東京本社 デザイナー 堀川さゆり氏

審査をしている最中に、審査をしていることを忘れて作品の中に入り込んでしまうようなワクワクする作品が、今回は特に多かったです。この作品を絵本にするとしたらどうなるかな…と、どんどん想像が膨らんでなかなか審査進みませんでしたが、それほど充実した時間でした。

私は絵本出版賞の第1回から審査員として参加しています。また、絵本のブックデザイナーとして、これまで何百冊もの絵本制作に関わってきました

審査で出会った、光る原石として未知の可能性を秘めてる作品が、編集者と組むことでどんどん高まり、「これがあの作品?」と思うほど変化を遂げて素敵な絵本になった例をたくさん見てきました。さらに、その作品が日本だけでなく海外でも出版されるという夢のような成功も見てきました。この成功は、受賞作に限らずです!

今回応募してくださった方は、絵本の制作に進んでいただいたら、編集者と組んで作品が良くなっていくことを、強く実感されると思います。ご自身の作品が、だれかの一生忘れられない絵本になる。だれかを笑顔にしたり、胸を熱くする絵本になる。そんな絵本作家になる第一歩が、この出版賞だと思います。


以上になります。

今回、受賞した方も、惜しくも受賞を逃した方も、この賞をご自身が進化する機会として利用していただき、資産にしていただけたらと思います。

編集者との出会いやイベントの機会も設けているので、そうした機会も積極的に利用してみてください。

絵本出版賞は、絵本作家になりたいすべての人を応援する存在でありたいと思っています。

第13回絵本出版賞の結果はこちらからご覧ください。