【第10回絵本出版賞】審査員3名の総評コメント

応募について

2023/02/20

先日、第10回絵本出版賞の結果が公表されました。

追って、最終審査に参加した審査員3名から審査の感想と応募者へのメッセージが届いたので、こちらで紹介します。

次回の応募のヒントも詰まっているので、これからの表現活動の参考にしてください。

 

応募作は、未来を形成する重要なピースです。

スプリングインク株式会社
代表取締役 城村典子氏

今回もたくさんの人にご応募いただき、大変ハイレベルな作品の数々に、審査が拮抗しました。

コンテストなのでどうしても受賞者を決めなければいけないのですが、応募者の皆様には、そもそも応募すること自体が尊いことなのだということを、ぜひ感じてほしいと思っています。

受賞しなかったから無駄だった、ということは決してありません。作家というのは、量産することで作品のレベルを上げていくものです。今回もそのために必要なステップのひとつであったと思うのです。

これで終わりではなく、これからもつくり続けていただくことで、この先どこかできっとご縁があります。社会に対しての存在感というのは、何度も繰り返し自分のオリジナリティを発表することによって出てくるのです。とにかく続けていただくというのが、私が考える成功の秘訣です。

また、受賞している作品の共通点は、どうしてここまでこだわるのだろう? と興味を惹かれるような強いこだわりがあることです。なので、ぜひ思い切り、自分の表現したいことではなく「表現せざるをえないこと」を表現してみてください。それが審査員の心を動かします。

未来を創るのは、権力者ではなくわたしたち市民です。コンテストをやっている以上、主催者と応募者に立場が分かれてしまうのですが、本当はその線引きすら取り払いたい気持ちです。

このコンテストは、みなさんと一緒につくってきたものです。みなさんがいるから、今日の絵本出版賞があります。だから、受賞の有無ではなく、その作品をつくったこと、発信したこと自体が、未来を形成するひとつの重要なピースであることを、ぜひ認識してほしいと思います。

 

あなたのいちばん面白いところを“発掘されて”ください。

提携出版社みらいパブリッシング
代表取締役 松崎義行氏

審査をしていると、作品から、世の中に対する意識や意思、それから願いなどを感じます。なにか、応募者の方と一緒に、社会に対する授業を行っているような気持ちになるのです。

応募者の方全員にお伝えしたいのは、自分は世の中に対してすごいことをやっているのだという意識をもっと持ってほしいということです。

また、今回の審査で、「才能を発掘する」というこのコンテストの意義がより明確になった気がします。

審査員は、目の前の作品にだけ集中して審査しています。なので、応募者の方にはぜひ「発掘されてほしい」です。

それを磨くのは後でこちらがお手伝いするので、まずは、自分の作品をどう売り出すか、自分をどう打ち出すか、などは一切考えずに、安心して自分の言いたいことや表現したいものを見せてほしいです。

自分のいちばん面白いところや得意なところを出してみてください。素材というか、原石のようなものを見せてもらうだけで十分です。

次回の審査も、今から本当に楽しみです。

 

突き抜けちゃっていいのです。

みらいパブリッシング大阪本社
副編集長 東野敦子氏

絵本出版賞の審査は、回を増すごとにレベルが上がっているのを感じます。どの作品も、ブラッシュアップすれば出版できるというレベルです。

今回の大賞作品は、「大人向け絵本部門」から選出されました。この部門は、対象が大人ということで、こだわりを出したり、突き抜ける表現をしやすいジャンルかもしれません。「赤ちゃん・学べる絵本部門」も、赤ちゃん向けと知育絵本でそれぞれ1つずつ受賞者を選びたくなるほど、心惹かれる作品が多かったです。

ただ、似たような作品もいくつかありました。昔は王道パターンではなかったものが、みんなが使いはじめて王道になってきた、ということがあると思います。いい作品をつくるためにはどうしたらいいだろう? と、常に昨日の自分を越えるような気持ちで研究に励んでもらえたらと思います。

応募者の方には、自分の楽しいと思うことや世界観を、とことん突き詰めてほしいです。どうしても「こうあるべき」とか「絵本ってこういうものだよね」と思ってしまったり、人に見てもらうと「やっぱりこうしたほうがいいのかな」となってしまったりするのものですが、そういうのを一切とっぱらって、枠なしでつくってほしいなと思います。突き抜けちゃっていいのです。

そうすると、それを読んだ人は、原石がそこにキラッと輝くのが見えるのです。なので、人の意見とか気にせずに、もう本当にそのままを出してほしいですね。

応募者の方とお話すると、落選して落ち込んでいたり、自分の作品に自信がない方もいらっしゃいます。でも、そもそも応募すること自体がものすごいことなのです。日常があるなかで創作や提出に時間をかけるというのは、実はすごく大変なことです。だから、応募したこと自体がもう、すでに才能の片鱗だと思います。その人のエネルギーや情熱、好きという気持ちをあらわす、尊いことだと感じます。

だから、自信を持って、どんどん突き進んでほしいです。心から応援しています!


以上になります。

受賞した方も、惜しくも受賞を逃した方も、これで終わりではなく、これをはじまりとして、表現活動を続けてほしいと思います。

第10回絵本出版賞の結果はこちらからご覧ください。

また、現在、第11回絵本出版賞の作品を募集しています。

次なる挑戦を、ぜひお待ちしています!