【絵本作家になるまでの道のり】受賞をきっかけに5冊の絵本を出版したくさなりさんの場合

受賞者インタビュー

2022/10/25

第2回絵本出版賞にて、大人向け部門最優秀賞と審査員特別賞をW受賞して、絵本作家としてのスタートを切ったくさなりさん。

すでに2年以上活動していますが、どのような経緯で絵本作家としての道を歩むことになったのでしょうか?

ここでは、くさなりさんに絵本作家になったキッカケなどについて、うかがいました。

 

第2回絵本出版賞でW受賞し出版された『おすしときとき おに』『植物界』




くさなりさんの最近の絵本

たね
著者:くさなり
価格:1540円(税込)
判型:B5判 32ページ 上製 オールカラー
出版日:2022年6月16日
ISBN:978-4-434-30409-5

天使がくれた4粒のたね。
呪文をつぶやくと、どんどん不思議なものがはえてきて……。

 

ゆめげきじょう
著者:くさなり
価格:1540円(税込)
判型:B5判 32ページ 上製 オールカラー
出版日:2021年1月15日
ISBN:978-4-434-28322-2

ひなちゃんが眠るころ、
みんなは“ゆめげきじょうの”座り順を決めている……。
いびきが聞こえてきたら、素敵な夢の世界のはじまりです。




――幼少期はどのようなお子さんでしたか?

引っ込み思案で、人と話すのがかなり苦手で、ヘタな子どもでした。

そのため、一人になる時間が多く、その分よく本を読んだり、絵を描いたりしていました。




――当時、どのような本を読んでいましたか?

絵本では、『びっくりしゃっくりくしゃみにおなら』(作 長新太、福音館書店)、『三びきのやぎのがらがらどん』(絵 マーシャ・ブラウン/訳 せたていじ、福音館書店)、『ふくろにいれられたおとこのこ』(再話 山口智子/画 堀内誠一、福音館書店)が特に印象に残っていて、何度か読んだ記憶があります。




――絵本を制作しようと思ったきっかけは?

幼少時は、お気に入りの絵本を繰り返し読んでいましたが、描くことはありませんでした。
寝る前に、脳内で空想の物語上映のようなことはしていましたが(笑)。
ある程度長い文章が読める年齢になってからは、しばらく絵本に触れていませんでした。

しかし、大学生のとき、改めて図書館で絵本を読む機会があり、やさしい文章の中に深いメッセージが潜んでいたり、絶妙なユーモアがあったりという、子どもだましではない良さに気づきました。

また、絵本といっても王道の子ども向けのもの、シュールなもの、アート感の強いもの等々あることを知って、その表現の自由さに魅力を感じ、自分もつくってみたいと感じました。

 

もし自分の夢が映画のようにだれかに観られていたら…?! そんな昔から考えていたアイデアから生まれた絵本『ゆめげきじょう』




――実際に、絵本をつくってみてどのようなことを感じましたか?

それまで、1枚で完結するイラストしか描いたことがなかったため、完成までに何十枚も絵が必要な絵本制作は、けっこう根気強さが必要なんだなと思いました。

また、自由な表現ができる分、「いい絵本」ってなんだろう? という正解が難しいなと感じました。




――そこから、絵本作家になろうと思ったきっかけを教えてください。

私は挿絵など、イラストの仕事もしていますが、絵本なら、絵も文章もまるっと自分の世界観をつくれると思いました。

表現できるなら小説家でも漫画家でもなんでもいいのですが、今のところ絵本の形式が一番自分に合っているように感じ、絵本作家をめざしました。




――絵本作家になるために、まず何をしましたか?

まず絵本のコンペに挑戦しました。


始めたころは、入賞しても出版にはとうてい至らず、編集者さんがアドバイスをくださっても、自分の実力不足で上手くかみ砕けなかったりで、どんどん何を描きたいのか分からなくなってしまい……。鬱々として絵本作家になることを、早々にあきらめました。

ですが、何年も経ってようやく、絵本作家になれなくても良いからまた描いてみようと思え、そこからはあまり大きな焦りも期待もなく、ただコツコツ制作しています。

 

最新作『たね』は、天使からもらった種を植えたら”かぞく”が生えてきた?! という奇想天外なお話




――実際に絵本作家になってみて、どうでしたか?

絵本を出版したからといって、思った以上に「絵本作家になったぞ」という心境にならなかったのが少し意外でした。


経験を積んで思うような表現ができるようになり、手応えを感じられて初めて自分が絵本作家だと納得できるのだと思いますが、そのラインに立つことが難しいのだと感じています。




――最後に、絵本作家をめざす方々にメッセージをお願いします。

絵本作家一本で生きていくのは厳しいかもしれませんが、やりがいのある職業だと思っています。


絵が上手な作家さんも、お話が面白い作家さんも山ほどいるな、と痛感します。
ですが、他人と比べると、自信や創作意欲をなくして、表現したいことも見失ってしまいます。
「自分を追求する道を行けば、そもそも誰かと戦う必要はない……」と自分に言い聞かせながら、これからも絵本作家としてさまざまな作品を生み出していきたいと思います。







Profile

くさなり

絵本作家・イラストレーター。島根県生まれ。『おすしときどきおに』が第2回絵本出版賞で審査員特別賞を受賞。大人向け絵本『植物界』が同コンテストの最優秀賞を受賞。絵本作品に『植物界』(ポエムピース)、『おすしときどきおに』、『ねことおばあさん』、『ゆめげきじょう』(みらいパブリッシング)。

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