【第8回絵本出版賞】各部門ごとの講評

絵本出版賞審査結果

2022/02/14

 

激戦の末に幕を閉じた、第8回絵本出版賞のレポートです。

「絵本部門」「大人向け絵本部門」「絵本のストーリー部門」3部門それぞれの講評を、今回審査員を務めた提携出版社社長の松崎義行氏と、同社大阪本社で副編集長を務める東野敦子氏に聞きました。

   
 

提携出版社社長 松崎義行氏

提携出版社大阪本社 副編集長 東野敦子氏

  

  

「絵本部門」の講評

  

今回の絵本部門は、よりどりみどりの状態。面白い作品がとても多く、大豊作でした!
 
優秀賞の数も増やして、6作品が受賞しました。
 
王道のものもあれば、かなり外れた作品もあり、勇気づけられた思いでした。
 
お客さんのいないところでパフォーマンスをはじめたようで、新しい絵本の世界がつくれるのではないか、というワクワク感がありました。
 
とくに大賞作品は言葉にできないくらいの、驚きや感動、喜びがありました。
 
作品そのものも素晴らしかったですが、14歳という作者の年齢を見て、二度驚きました。
 
未来の絵本の世界を背負っていくような人を見つけた気分でした。
 
競合たちの作品も秀でていて、非の打ち所のないものも多く、出版されるのが楽しみです。
 
落選作のなかにも、魅力的なものはたくさんあり、出版すれば世間で喜ばれるのではないだろうかという作品もありました。  

 

(松崎)

絵本部門は素晴らしい作品が多く、大賞とそれに並ぶような作品たちは、皆最高評価を超える出来映えでした。
 
色使いから世界観、ストーリーの流し方、緩急の付け方などありとあらゆる部分が上手かったです。

 

(東野)

  

大賞に選ばれた「びっくりちゃんがびっくりするわけ」。作者のMAOさんは若干14歳!

  

審査員特別賞「おっこちぬまのペリ」にきゆきこさんの作品

  

  

  

「大人向け絵本部門」の講評

  

 

大人は日頃、現在の自分と子どものころの自分をべつものと考えがちです。
 
しかし私たちの中心軸には、子どものころの自分がいます。
 
子どものときに絵本からさまざまなものを受け取ってきたものの、初めて水や花に触れたという経験は二度とできない。当時の感性はよみがえらすことができないのです。
 
そのころの感動や驚きを、大人向けに翻訳して伝えられるかが、この部門の肝だと感じます。
 
大人向け絵本部門は、その他に比べて、描きたいものを描いている人が多いような気がします。
 
子ども向けだと、子どもを喜ばせるためにエンターテインメント性が強くなりがち。
 
それより、自己表現に近い形です。
 
大人ならではの年輪を重ねた人だからこそ、できる感動。
 
それが何かを考えさせられるのが、この審査のポイントです。
 
大人になっても新たな感動はあります。
 
それは子ども時代から離れているようでくっついていて、それに寄り添ったものとして描いたとき根源的な感動が訴えられるような気がします。

 

(松崎)

 

大人向け絵本は私にとって、大人になっても手元にずっと置いておきたい1冊です。
 
仕事や日々の生活に煮詰まったときに、ページを開いて別の空間に遊びに行ったり。鞄のなかやデスクの上に置いておいて、短い物語の世界にスッと引き込まれて、いったん頭や心を休ませる。そんな使い方ができる作品を選びたいと感じています。
 
大人向けだからって、抽象的に難しくする必要はありません。
 
子ども向け同様、シンプルだけど奥深い。そんな作品が印象に残るような気がします。

 

(東野)

  

大人向け絵本部門で最優秀賞に輝いたのはkogyさんによる「じーさん と さくらぶんちょう ぴーぽっぽ」 

  

  

「絵本のストーリー部門」の講評

  

 

この部門の応募作品もとても充実していました。
 
生きていると、うれしいことも苦しいこともありますが、すべて空想の世界につながっている、ということを審査しながら思い出させてもらいました。
 
そこでひとしきり遊ばせてもらって帰ってくると、日常の空気が澄んでいるような気がします。
 
混沌とした日常の事物がクリアに見えるようになった気がするのですね。
 
そんな空想の世界に連れて行ってくれるのは、絵本が最も得意とすることでしょう。
 
たくさんの空想の世界に行くことができ、まるで世界を100周したかのような心地よい疲労感です。
 
とくにストーリー部門は絵がないため、自らの眼裏に、思い描いた世界を浮かべることができます。想像力が鍛えられますね。
 
それだけたくさんの良質なストーリーが詰まっていたということでしょう。
 
また空想の世界といえども、現実世界にある地球環境や差別、貧困などの問題を取り扱った作品も多くありました。
 
それも絵本のひとつの役割。
 
より多くの人たちに、共感性をもって接してもらえるのではないかと感じました。

 

(松崎)

 

秀逸な作品がたくさんありました。
 
スピード感やエンターテインメント性を備えた作品、絵で見てみたいと思えるような作品……。
 
さまざまな発想や世界観があり、すべての作品が同じ方向を向いていないところが面白かったです。

 

(東野)

  

  

 

 

以上、各部門の講評を紹介しました。
 
 
今回も多くのすばらしい作品が集まりました。
 
とくに絵本部門は激戦で、優秀作品が6作品と通常の枠を超えてしまったほどです。
 
質の高い作品が集まるほど、絵本出版賞の注目度は高まり、出版された作品に多くの人が興味を示すようになります。
 
絵本作家を目指す人は、ぜひ絵本出版賞への応募を検討してみてください。
 
絵本の世界に新たなムーブメントを巻き起こせるかもしれませんよ。

 

 

    

    

   
 


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