2022/02/07
第8回絵本出版賞の最終審査を経て、受賞作が決定しました。
最終選考を終えたあと、今回審査員を務めた提携出版社社長の松崎義行氏と、同社大阪本社で副編集長を務める東野敦子氏に話を聞きました。
今回は、いつも以上に、新たな才能を見逃さないよう細心の注意を払いました。
事前審査も審査員全員が一堂に会して、質問や疑問があったら声を上げられるようにしたり、落選作品の救済措置を設けたりもしました。
実際、最終選考においても、敗者復活の仕組みを利用して入賞を果たした作品も出てきました。
というのも、非常に個性的な作品は、その革新性ゆえに、落選しやすい傾向にあります。
どうしても、見知った雰囲気の作品のほうが、判断しやすく上位になりやすくなってしまうのです。
しかし、そのような作品を救い上げるのが、この絵本出版賞です。
手直しの必要はあるものの、才能がキラリと光るもの。
才能さえあれば、応募作を出発点とし、編集者とのやりとりを通じて、より作品を高めることができます。
そのような作品を見落としてしまわぬよう、今まで以上に注意深く審査しました。
実際に、審査の精度も回を増すごとに上がってきたと感じています。
絵本出版賞も第8回を迎え、期待を上回る良い作品の応募がたくさん来るようになりました。
応募してくださった皆さまには、心から感謝申し上げます。
最初は応募者の方も、絵本出版賞がどのような賞なのか、本当に自分の才能を発掘してくれるのか、分からなかった部分もあったと思います。
しかし、最近は、賞の知名度も上がり、どのような新人作家が出てくるのか、書店様をはじめ、絵本のマーケット界隈での期待も高まっているように感じます。
私自身、「次は、どのような作品が出版されるのですか」とよく聞かれます。
面白い新人をたくさん輩出している賞。そのような評判を耳にするたび、うれしい思いがわきあがり、この賞に携りはじめたのは間違いではなかったと確信しています。
読者や書店、保育の現場などから期待の言葉をかけられるたび、「いい加減な審査はできない」と決意を新たにし、審査に臨んでいます。
今回も、革新的な作品や表現がたくさん見受けられました。
バリエーションの広さこそが、この賞の懐の深さを表していると感じます。
過去にも絵本出版賞は、「応募しやすい賞」と言われてきました。
ほかの賞では入賞が難しいような作品でも、受賞の可能性を秘めている。
だからこそ、入賞者が知人や友人に紹介するなどして、どんどん応募する方が増えてきたのだと思います。
その結果、今まで以上に際立った、さまざまな作品が集まってきました。
また、応募作をみていると、すでに当社から出版された絵本を読んでくれている人も多い気がします。
受賞するためにはどうすればいいか、研究してから応募してきてくれているのを感じます。
もし落選続きで、入賞を諦めようとしている人がいましたら、ぜひ過去の受賞作を研究してみてください。
それからどのような作品をつくるか絞り込んでいくと、入賞の可能性が高まると思います。
審査員は、「この作品は絵本出版賞を意識してつくっているな」というのを感じます。
私たちの期待を上回っている作品は、そのような作品が多いのです。
絵本の世界は誰に対しても、平等に開かれています。
その世界にいる人みんなで創作できますし、味わうこともできます。
ぜひ出版された作品から、賞の実体を感じ取ってもらい、心を解放させてください。
そうすることで、おそらく迷いが吹っ切れると思います。
また今回も、今の日本や世界上にあるさまざまな問題に正面から向き合ったり、議論に乗せたりしようとしている作品がたくさん見受けられました。
出版には、自分の作品をみんなの作品にできる良さがあります。
ぜひ自らの作品を「みんなに共有したい」という夢をかなえていただければと思います。
私は過去の受賞作の出版相談に乗ってきましたが、その際も、入賞は逃したものの、手直しをすれば出版できるであろう作品をたくさん見てきました。
今回は、今まで以上に、絵本として出版できる可能性を秘めた作品が多く、驚きました。
王道のパターンやよくある題材を扱ったものもあったものの、そのなかでも自らの個性を貫き、突き抜けた作品をいくつも見かけました。
当社が、他社では取り扱わないであろう尖った作品や作家の作品を世に出していることを、見抜いている人が増えているのではないかと感じました。
審査員も応募者もそして読者も、向かおうとする方向が揃ってきているように思い、ワクワクしています。
私たちが思うのは、「“絵本とはこういうものだ”という価値観を勝手につくらないでほしい」ということです。
突き抜けた世界観をつくり、それをぜひ見せてほしいと思います。
そのような考え方のもと創作に励んだら、入賞に近づくのではないでしょうか。
選考に残りたいのであれば、審査員の目に留まるよう、自らの表現力を突き詰めて、挑戦するべきだと思います。
そこで目に留まらなかったら、受賞することができません。
だからこそ、まずは自らの感性を遠慮なく表現してもらいたいのです。
なかには、読者に喜ばれるよう、読者が期待するものを描く人もいると思います。
しかし、読者に迎合することだけが、読者のことを考えるということではありません。
たしかに、読者のことを考えて「この表現は伝わるだろうか」と思うことは大事です。
しかし、読者に伝わるよう表現するには、読み手に対する、愛や思いやりが必要不可欠だと思うのです。
ある程度は読者に任せる。この先がどうなるかは、読者の感性に委ねる。
その思いが伝わることで、相手の気持ちが温かくなったり、うれしくなったり、いい気分になったりする。
そういうのが、読者に対する“愛”だと感じます。
“突き抜けた世界観”だからといって、ただただ「聞いてくれよ」と叫ぶのは違う。
ボーダーラインが難しいのですが、読者への愛は忘れず、独特の世界観を突き詰めていってもらえたらと思います。
今回は、僅差で惜しくも受賞を逃した作品もたくさんありました。
落選作のなかには、手直しを加えることで、出版できるであろう作品もたくさんありました。
選ばれなかった作品も、入賞するか否かの議題にのっていた可能性は十分あります。
なので、「ダメだった」とがっかりするのではなく、絵本を描くこと、絵本に携わることは、これからも続けてほしいです。
次回、あなたの新たな才能に出合えることを楽しみにしています。
現在、第9回絵本出版賞の応募作を募集しています!
絵本出版賞では、新たな才能の発掘に力を入れています。
既存の概念を揺るがすような作品をぜひとも送付してください。
入賞すれば、絵本作家としてのデビューも望めます!