2021/06/02
第4回絵本出版賞にて、『プンドンカリーのくらべっこ』で奨励賞を受賞したゆざわひろゆきさん。
『プンドンカリーのくらべっこ』はプンとドン、カリーという3匹のはりねずみの兄弟たちがこわーいくろヒョウにおそわれて……という話。個性豊かな3匹のはりねずみたちが織りなす物語が「可愛らしい」「考えさせられる」と大勢の読者に喜ばれています。
そんな『プンドンカリーのくらべっこ』を制作しようと思ったきっかけや、出版を通じてゆざわさんが感じたことや次なる夢・目標とは?
ご本人にお話を伺いました。ぜひ絵本出版を目指す方は、参考にしてください!
◆プンドンカリーのくらべっこ あらすじ
おこりんぼのプン、やさしくて傷つきやすいドン、せっかちでおっちょこちょいなカリー。
3匹のはりねずみはきょうだいだけど、ぜんぜん似てない!
そんな3匹のもとに、ある日くろヒョウが現れて……。
三者三様だから織りなせる、冒険譚!!
――本作を絵本出版賞に応募しようと思ったきっかけは何ですか?
『プンドンカリーのくらべっこ』はどうしても出版したいという思いがありました。
もともと絵は描いていて、個展を開催したり、ほかの出版社を通じて、絵本を出したりしたこともありました。
インターネットでコンテストを検索していたら、絵本出版賞が見つかって。2割ほど未完成でしたが、頑張れば間に合いそうだと思い、期日までに完成させました。
挑戦した結果、奨励賞受賞の通知を見たときは、両手を突き上げて「やったー」と喜びましたね。
作画の様子
――実際に、みらいパブリッシングから出版することになってどうでしたか?
出版のご提案をいただいたときは、2つ返事で引き受けました。でも、そこからけっこう苦労しまして(笑)。
完成まで全編2、3回作り直すくらい手をかけました。
応募時は、自分のなかにある表現したいものを描いていましたが、打ち合わせをするなかで、いったんすべてを分解し、読者に喜んでもらうためにはどうすればいいか、タイトルを変えるなど工夫を凝らしました。
出版と応募作との大きな違いは、編集者や出版社さんの力やアイデアが取り入れられること。
編集者さんに「こうしてみたらどうですか?」などと助言をいただくことで、客観的に自分を見つめ直すことができました。
クロヒョウがどんどん小さくなって、ネコに?! 見たことのない展開にたくさん出会える絵本です
――出版するにあたって、特に力を入れたのはどの部分ですか?
それぞれのキャラクターに個性を持たせるところですね。
プン、ドン、カリーのおこりんぼうでプンプンしているところや、思い悩んでしまうとフリーズしてしまうところ、せっかちでカリカリしてしまうところは、すべて自分のなかにある要素です。
それらをキャラクターにしてみたら、新しいプン、ドン、カリーという形になりました。
キャラクターが完成したら、ストーリーも自然に湧いてきて、最終段階の打ち合わせでは自分のなかで表現方法がかなりはっきりしてきましたね。
それまでは自信が持てず、迷走してしまうときもありましたが、最後はゴールに向かってどんどん加速していく感じでした。
――3匹の個性豊かなキャラクターが愛らしいです。ゆざわさんが特に自分に近いと感じるのは、プン・ドン・カリーの誰ですか?
ドンですかね。
私も表現がヘタなところがあって、目の前に突如壁が現れると、立ち止まってしまい、言葉も出ないしリアクションできないことがあります。ドンが一番近いです。
ショックなことがあると、こわーい”おめん”をかぶって動かなくなってしまうドン
――ゆざわさんが本作やほかの絵本作品も含め、伝えたいと思っていることは何ですか?
自分が絵本作家として活動していくなかで、忘れたくないのが、家族や友達との人間関係の中で教えてもらった、または気づかされた大切なことをテーマにすること。
人間として生きていくうえで大事なことをテーマに、発信し続けていきたいですね。
――今後の夢や目標はありますか?
おかげさまで『プンドンカリーのくらべっこ』は反響をいただいていて、続編やシリーズ化を望む声もあるので実現させていきたいです。
ほかにも、別のテーマでも創作案があるので、いろいろ作品をつくっていきたいです。
『プンドンカリーのくらべっこ』は現在、オリジナルのグッズの販売も行っていて、それも出版社の社長さんから、「可愛いからグッズをつくってみてはどうですか」ときっかけをいただきました。
お客様からも「グッズが欲しい」というリクエストをけっこういただき、グッズから『プンドンカリーのくらべっこ』に興味を持ってくださる方もいます。
私の出版を自分事のように喜んでくださる方もいて、本当にありがたいです!!
グッズから絵本を知る人も増えているとか。納得のかわいらしさです!
――最後に、絵本出版賞への応募を考えている方にメッセージをお願い致します。
私も応募時点では、自分のなかで表現したい絵を描いて、テーマや話の流れを決めて、完成させていきました。
しかし出版を通じて、改めてテーマを決め直して、そこからキャラクターの個性が完成し、ストーリーそのものも変化していきました。
けっこう苦労もしましたが(笑)、「必ず完成させよう!」という気持ちが強く、“出版”というゴールに向かって加速していくなかで、絵本の面白さがどんどん感じられたと思います。
応募を検討している皆さまも、少しでも絵本で何か届けたいという思いがあれば、ぜひとも一歩踏み出してもらいたいです。
私も出版という過程のなかで、いろいろありましたが、「ああしてよかった!」と思うことはたくさんあるものの、後悔することはほとんどありません。
自信がなかったとしても、編集者さんや出版社の方々がチームとなって、色々助言してくれます。
私は書店だけでなく、カフェにも作品を置かせてもらっているのですが、その場で見本を読んで「欲しい」と言ってくださる方や、「うちの息子はドンがすごく好きみたいで」などと感想を教えてくださる方とリアルにお会いすることができています。
「出版してよかった」と思う日々は、現在も続いています。
ぜひ皆さんも、絵本出版という夢を実現させて、新たな人生に一歩踏み出してもらえればと思います。
《 ゆざわひろゆきさんからお知らせ 》
ゆざわひろゆきさんの絵本オリジナルグッズショップでは、プン・ドン・カリーのマグカップやTシャツなどを販売しています。
絵本作品の購入もできますので、興味のある方はぜひご覧ください!!
《 本について 》
『プンドンカリーのくらべっこ』
著者:ゆざわひろゆき 価格:1430円(税込)
プンドンカリーは、はりねずみ3兄弟。
3匹でいるといつもケンカばかりしています。
そんな3匹のもとに、ある日くろヒョウが現れて……。
《 ゆざわひろゆきさん プロフィール 》
絵本作家・イラストレーター
埼玉県生まれ。デッサンやアクリル画、油絵を独学で描き続ける。
2017年に埼玉県行田市のLEMON CAFEで絵画個展を開催し、お客様のリクエストを受けて絵本制作を始める。
絵本作品に『ピピとララ』『ピピのへや』(ニコモ)。本作品で第4回絵本出版賞奨励賞を受賞。
Twitterアカウント:PIPIROOM_
絵本オリジナルグッズショップ:https://pipisroom.base.shop/